32分休符

感想を述べていこうと思います

ワンピース

総柄のワンピース、大好きなんです。一枚で決まるし非日常感出るし。

その昔、専業主婦だった母は「パジャマ」「部屋着」「外出着」「およそいき」がちゃんと分かれていて。あれはいいなぁと今も思う。私は二つだなぁ。「部屋着」と「外出着」。「部屋着」で寝ちゃうし(なんならコンビニくらい行くし)、「外出着」で仕事も遊びもまかなってる。
そんななかでも「総柄ワンピース」だけは「およそいき」。お芝居とかホテルでランチとか、ここぞというときに着る服。退社後に予定がある日はその日1日、社内で「あれ?今夜予定あるの?」と聞かれちゃう、ちょっと気恥ずかしいお洋服。


でも、総柄ワンピースはなかなか好きなのが見つからない。服として自分に似合うかという普通の観点のほかに、一枚の絵として好きかを考えるから。スカーフもそうなのかな?スカーフも四十路になったらチャレンジしてみたいアイテムだなぁ。あれは巻くことによって絵の見せ方が変わってくるからますます難しそうで楽しそう。


と、前置きは長くなったけど、最近入手したフラミンゴ柄のワンピース。

f:id:sasamichan:20200408142707j:image

f:id:sasamichan:20200408142723j:image

夏になるまでに麻のジャケットと合わせてお芝居に…と思っていたけど、世の中そんなことも言ってられなくなってきた。これ眺めながら「部屋着」でごろごろする毎日です。いいの、絵としても好きな服だから。

ロードオブザリング

娘が11月で1歳の誕生日を迎える。なにか記念になるものを「私が」欲しい。だって頑張ったもん。

来年の春にはきっと復職してるし、通勤時には今よりはアクセサリーもつけられるしヒールも履ける(はず)。だから、実用的なものじゃなくて自分の好み一直線のちゃらちゃらしたものがいい。私は特にアクセサリーはとても気に入ったものを毎日つけるタイプなので、妥協せずに一番欲しいものが欲しい。アクセサリーの中でも、つけたときに自分の目にも留まる指輪がいいな。

…とつらつら言い訳を書いたけど、つまり指輪が欲しい。実は言うほど育児を頑張ってなくても欲しい。娘と私の記念になるようにどちらの誕生月でもある11月の石(シトリンかトパーズ)がいい。もちろん自分で買います。

こんな経緯で私のロードオブザリングが始まった。

 

以下候補(公式より画像拝借しています)

TASAKI

f:id:sasamichan:20190910092344j:image

TASAKIとMHTのコラボ商品。この雰囲気、セーラームーンとかが好きな人にはたまらないんじゃないかなぁ。上質な素材で遊び心があって素敵。パールは傷がつきやすいので日常使いは少しきびしい気もするけれど。

 

Tiffany

f:id:sasamichan:20190910130107j:image

モデルさんが手に着けてる画像を見ると結構大ぶりなんだよね。年をとってもつけられそう。お守りっぽいモチーフも誕生石&1歳記念にぴったりだし、丸みを帯びたデザインなので小さい娘との生活で着けるのに向いてるかも。こちらはマイサイズを最寄店に取り寄せ中。試着予定です。楽しみ。

 

・RICO by mizuki shinkai

f:id:sasamichan:20190910130706j:image

ロンドンブルートパーズ。昔は11月生まれの誕生石がトパーズって地味だなーオパールとかダイヤがよかったなーと思ってたけど、トパーズよい。これみたいな深い青から透き通った青、黄色、ピンクに白といろんな色があるので肌の色にぴったりなものが見つけやすい。そしてこういう華奢なアンティーク調のデザイン、大好物なんだけど、年齢とともに厳しさを噛み締めている…本人がアンティークになりつつあると似合わなくなるもんだな…20代のお嬢さんにおすすめしたいかわいいリング。

 

・pomellato

f:id:sasamichan:20190910131449j:image

いつか欲しいなぁと思っていたポメラートのヌードリング。大粒のキャンディがコロンとしてるみたいでかわいい。予算のゆるす限り頑張って大きいのを買いたいなぁと思った。しかし、ここまでトパーズの検索や試着を繰り返しておいてアレだけど、顔黄色い族(イエベ)にはなかなかにハードル高い色味なんだな…。これも重ね着けをお店の人が提案してくれて同じヌードリングのレモンクォーツと合わせたら超超いい感じだった(当然そんな予算はない)。黄色が入るといいんだなぁ。ここ最近でいちばん金が欲しいと思った瞬間であった。

本当にポメラートは石がきれい。トパーズは1万円以下でもたくさんアクセサリーはあるけど、透明度がぜんぜん違う。旅先で世界遺産の湖見てるくらいの気持ちになる。その景色が自分の指元に凝縮展開されてるの。指輪かわいい!ていうより(かわいいけど)、自然界とは…と思ってしまった。すごい。

 

・Boucheron

f:id:sasamichan:20190910133112j:image

ここにきてブルートパーズ似合わないのかも…となってシトリン。誕生石が二つある月で助かった。落ち着くーーー。マリッジリングがレールタイプのハーフエタニティなんだけど、それと重ね着けしても昔から持ってたようになじむ。間違いなく毎日使う。顔黄色い族には黄色味が大事。定番商品だけに、結局これになったかーって気はすると思う…。

 

今のところ候補はこんな感じ。できれば増税前に買いたいけど、買い物で妥協ができない&勢いで買えないタイプなので、楽しみながらもう少し探すつもり。夫に「あなた欲しいもの調べるとき予算度外視だよね」と言われて気づいたけど、たしかに欲しいものを探すときに予算で絞らないかも。で、だいたい買えないようなものに惚れ込んで、毎日画像だけ見て、そのうち熱が冷めて何も買わないケースがほとんど。節約術にはなってるかもだけど、娘の1歳の誕生日に指輪を買うという設定に酔ってるので今回はきちっと決めるつもり。

料理下手のふだんの料理

我が家は現在、私(育休取得中、復帰はたぶん来春)、夫(フリーランス。昼夜家で食べることが多い。朝は食べない派)、娘(絶賛ハイハイ中の8ヶ月。BF拒否)という構成です。料理担当は私で、夫は鍋と炒め物くらいしか作りません。

以前は外食が週3くらいでしたが、妊娠中〜現在は家族での外食はほぼゼロで、料理が苦手な私が作っています。

来春の復帰に向けて、自分や家族の向き不向きを踏まえて日々の調理を回していくうえでのポイントを覚え書き。本当に料理が苦手で嫌いなままアラフォーになってしまったダメ人間が書いているので、お料理が人並み以上にできる方は一笑に付してください…。

 

・一汁一菜でいい

そうです、土井善晴先生です。というか、一汁一菜以上は絶対につくらない、くらいの気持ちで。食卓を貧相に見せないポイントは、汁物の具は思い切り大きく切ってお椀ではなく深皿に盛る。

f:id:sasamichan:20190726083730j:image

大根なんか、ちょっとしたおでんか?くらいの大きさで切る。写真は豚汁だけど、豚肉も薄切りじゃなくて豚肩ロースとか使う。味噌味がついた汁多めの煮物みたいな感覚で。うちは夫が極度の猫舌なので、お椀より皿の方が早く冷めていい、という利点もあります。

Twitterで「料理が下手な人は出汁をとらない」というのが流れてきて、これはまさに私のこと…と冷や汗をかいたのですが、出汁の素じゃなくて、出汁パックで出汁をとると汁物って全然味が違うんですね。

 

・作り置きをしない

これは、できる人はどんどんやったらいいんだと思います。私はどうもタッパーに入れてあるおかずが冷蔵庫に入ってると、食べなきゃ、というプレッシャーで気が重くなるのと、レシピに「冷蔵庫で5日ほど保ちます」と書いてあっても、2日目あたりから「本当に大丈夫か?」と匂いをかいだりして、そうするとなんだかおいしい気がしなくなってしまうので(もともとそんなにおいしくない)、すっぱりやめました。ブロッコリー胡麻和えとか割と好きなんだけど、どうしても作り置きすると水分が出てきて、そういう見た目も私の「大丈夫か?」という気持ちを加速させる原因になるので。今のところ、その日に作ったものはその日に食べ切るのが原則。いつか料理が上手(せめて好き)になったらここは変わるかな。

 

・メインはステーキ、刺身を多用する

各社料理キットも使ってみたんですが、手際がよくない私がモタモタと手順書を読み、たくさんある小袋を開け、指示通りに素材ごとにレンジで解凍や加熱をしたりしてると、案外時間がかかる。そして、自分が作りなれたものを作るときは完成形を知ってるけど、料理キットは料理名からおおまかな味は予想できても、基本的に未知のものが出来上がるので、「ふーん、なんだか甘辛が過ぎる気もするけど、これはこういうものなのか…へー…」とすわりが悪い感じで食事が終わってしまう。

で、つくりなれたものってステーキと刺身かよ!!というヒドイ話なんですが。

 

・流しでトマトを食え

一汁一菜だと生野菜の入る余地がなくなるんですけど、夫も私もあいにく生野菜がわりと好きなんですよね…。でも鉄の掟で一汁一菜なので。あと、野菜サラダって案外手間かかりません?そろえて薄切りにするのも難しいし…(私には)。素材によっては塩もみしなきゃいけなかったり。一番面倒なのは水気をとること。まな板とか流しとか手とか、全てがずぶ濡れの調理中にキッチンペーパーで野菜の水気をとるの、地味に時間かかる、ほんと嫌。

だから、生野菜はミニトマト一択で。しかも皿も出しません(一汁一菜なので)。食前でも食後でも通りがかりでも好きなタイミングで流しで洗ってヘタを取ってそのまま食べてください。調味料も使わないのでヘルシー!

 

以上が育休も半分ほど過ぎた時点での我が家の状況。1年後にはどうなってるかな?

願わくば娘の離乳食がすんなり完了して外食をちょいちょい楽しめる生活に戻りますように!

名前

娘の名前は夫が決めた。

夫は記者、私は校閲なのでどちらも言葉にまつわる仕事をしているし、響きや文字にこだわるのはいつも私の方なので聞いた人は意外だと言うけれど、それでよかったと思う。

私がつけたら、漢字に思い入れがあるあまり、洋服やアクセサリーを選ぶときみたいに、(センスがいいか悪いかは別として)手頃だけど少し贅沢な感じで、名字と並べてもきりりと締まるとっておきの名前を苦労して考えただろうけど、そうすると完全に私好みの名前を持つ娘を呼ぶたびに所有している気分になりそうだから。

母が娘を所有物のように扱うのはとてもよくない気がするので、夫がつけた「なんとなくかわいいし、かわいい人に多い気がする」というだけの名前は、変わった名前ではないけれど予想外だったので、娘といえどもこの子は突然やってきた自分とは別人格の女性、ということを私に何度も思い出させてくれてよい。

☆ ☆ ☆

今日は土曜で、夫が娘を2時間ほど見たので、池袋でピンク色の夏物のアンサンブルニットを買って(子供を産んでから買い物がとても早くなった)、家の向かいの喫茶店でお茶を飲んだ。喫茶店に置いてあった本は数年前にヒットした『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』だった。おもしろそうだけど、みっちり詰まってるタイプの文体で、しかも翻訳小説だと娘の相手をしながら読み進めるのは難しいだろうなと思ったけど、どうせ読みきれないのに何十ページか読んでしまった。なんなんだこれは。なんの時間なんだ。

「お母さん」でいるときは「お母さん」ではない時間に憧れるし、そういうときはピンク色のニットとか着たくて、でも一人になってどうしてもやりたいことは特になくて、スマホに入ってる娘の写真や動画を眺めたりするし、かといってコーヒーが飲めたら満足というのもまた違ってて、どの道もちょっといったら行き止まりになってる感じがする。

夫と娘と3人でベッドで寝転んでるときは、いつか夫に先立たれて娘が独立して一人で寝るときは、この時間のことを信じられないほど幸福な一瞬として思い浮かべるのかなぁとも思うし、未来に視点を置いてまで現在の自分を幸福だと評価するのは、今を慰めてるだけなのかなとも思う。一瞬一瞬を電気ショックに打たれるようにまぎれもない幸せだと信じられたらよいのにね。

料理下手のおもてなし料理

昨夜は夫の職場の後輩2人とわたしの職場の先輩を招いて5人でご飯を食べた。

客が少ない家で育ち、料理より掃除が好きなほうなので、この「家に人を招いて手料理を食べさせる」的イベントが結婚当初はすごく苦手だった。ちなみに夫は来客が非常に多い家で育ち、バックパッカーをやっていたので若い頃は自分もまわりも収入が不安定で、飲み会といえば家飲みがメインだった人。そのせいか、夫の友達には男女問わず料理上手が多い。

招いたり招かれたりしているうちに、料理下手なりのおもてなし方法が少しみえてきたので、備忘録のためにメニューを毎回記していこうと思う。

 

1、メインには自分の味付けができるかぎり不要なものを選ぶ「しゃぶしゃぶ」

夫がカタログギフトで注文した黒毛和牛があったので心強い。私の準備は土鍋に昆布を敷いて鶏肉を煮込んで出汁をとっておいたこと、野菜(水菜、エノキ、ネギ)と豆腐を切ってバットに並べておいたことだけ。おもてなし下手で緊張するので、人が来る前に野菜のカットも全部済ませてラップをかけておく。

味付けは独身時代から愛してやまない旭ポン酢と、こないだ友達から内祝で送られてきた茅乃舎の胡麻ドレに任せる。ちょっといい調味料は見栄えもよくなるので大事。

メインはほかに、焼き肉のこともあれば、これは味付けは多少必要だけど、人が来る前に完全に仕上げられるので気が楽なおでんのこともある。すき焼きは絶対にやりません。あれは出たとこ勝負だし、育った地域によって正解の味が大きくかわるのでメインに据えるのはこわい。

インスタなどでよく見る餃子パーティーもすごいなぁ、いいなぁ、と尊敬する。わたしは餃子はもっぱら冷凍食品を食べています。

 

2、お刺身的なものを用意「馬刺」

今回は熊本の実母が送ってくれた馬刺があったので楽勝だった。というか、馬刺があったので開かれた会だったのだ。ふるさとの食材は話題も広がるので重宝する。いつもはデパートやちょっといいスーパーで刺身の盛り合わせを買う。料理上手な夫の友人の家に行くと、お手製なめろうやからすみ(!)が出てくるし、大変おいしいうえにそっちがコストも抑えられるんだろうなとは思うけど、わたしは料理が苦手なんだから仕方ない。ただし、トレーから出して綺麗に盛り付けるのは好きだし結構得意。

いい感じの刺身が手に入らない場合、生魚が苦手な人がいる場合は、専門店のチーズにするときもある。

 

ここまで、1も2もわたしは何も味付けをしていない。

 

3、つくり慣れたものを2品「春雨サラダ、葱入り卵焼き」

茄子の煮びたし、ポテトサラダ、ラタトゥイユなんかのときもある。

何度もつくっていてふだんの食卓にも並ぶことが多いメンツ。とはいえ、もちろん事前につくっておく。

卵焼きは、最初はこんなもん需要ある??と思っていたけど、独身男子で酒飲みの人はわりと卵焼きをたくさん食べてくれる傾向にある。そういえばわたしも居酒屋で頼みがちだしね、出汁巻き。

 

4、チャレンジメニューを1品「海老マヨれんこん」

1品くらい新しいことをやらないと、作ってる方もつまらないので。たいていの場合、3日くらい前にリハーサルと称して食卓に上げている。今回は冨田ただすけさんのレシピ本から。冨田さんのレシピは家にある調味料でできるから助かるし、ウェイパーとかコンソメなどの「~の素」的なものをほとんど使わないのにきちんと落ち着いた味になるから料理下手は毎回感動している。

海老マヨれんこんは、中華料理店でよく食べる海老マヨ的な味付けだけど、揚げなくていいので楽。あと、料理下手としてはれんこんを買う時点で料理が出来る人になれた気がしてうれしい。海老はヨーカドーでいつも買う背ワタがとってある冷凍海老。解凍して殻をむくだけで使えるし、むき海老より立派なので、海老といえばこれ。背ワタの取り方なんて、もはやYouTubeでも見ないと分かんないです…。

炒め物なので、これだけは人がそろってから調理することになったけど、事前に調味料はすべて計量してボウルで合わせておく。

なぜか中華のことが多くて、過去には海老チリ、麻婆豆腐など。これから作ってみたいのはグラタン、豚の角煮。ここで新メニューを克服すると日々の食卓にも役立つ。

 

5、洗うだけ、茹でるだけ、袋から出すだけの1品「ミニトマト

ほぼ賑やかしだけど、わたしは食卓にのぼっているものに全部味がついてると舌が疲れる気がするので、かならず加える。枝豆やブロッコリーのときもあり。

 

以上がきのうのメニューだった。すべて食べきってもらうと、やはりうれしい。疲れるけど、料理教室に1度行くより、人を1度招くほうが断然身になると思う。

しかしこうしてやってみると、正月やお盆に毎年十何人も集まって食べさせてもらっていた祖母の手料理はすごかったんだな、と実感する。おせちはもちろん、柿の白和えや潮汁なんて一生つくれる気がしない。

 

週末はご褒美として一切料理をしない予定だ。外食もまた楽し。

 

日記はじめます

2週間前から産休に入り、料理と掃除以外することがなくてあまりにひまなのでブログを始めることにした。

生まれるまでの産休中、本や映画をたくさん読めるし観られる!と思っていたけど、インターネットばっかり開いてしまう。どこかの誰かが書いたブログを読んでしまう。他人の日常はなんでこんなにおもしろいんだろう。映画も本も、わたしが観たり読んだりして持った感想より、ブログで紹介してあるともっとおもしろそうで意味ありげですてきだ。まだ暑いのにもう今年のコートで悩んでいる人もいれば(コートを毎年購入するという意欲がいい。ファッショナブルな人はお店と懇意になり来シーズンの服を予約して買うということを知った)、風呂場に並べてあるシャンプー、コンディショナー、ボディーソープ類の容器を無印の透明のボトルに詰め替えて「ホテルライク」な風呂場を目指している人もいる。よく食べる人のブログもいい。丸亀製麺で温冷の2杯を食べるなんて斬新だし、あとお金持ちの人の日常は割となんでも楽しい。ハワイのコンドミニアムの取得方法とかに詳しくなった。
朝ごはんは食べないのに、毎日モーニングを紹介してくれる人のブログは大好きだ!

そういうわけで、わたしも自分の日常を好きになるためにブログを始める。職業は校閲、初産の予定日は11月で、女の子が生まれる予定で、夫と東京でふたり暮らしをしている。

回り菓子

回り菓子なるものが、百貨店(ほとんどの場合地方の)の地下一階の菓子売り場の片隅にひっそりと存在していることは、きっと多くの方々がご存知だと思う。思うというのは、わたしは回り菓子を、おやつに、お土産に、ちょっとしたご褒美に、食べつけて育ってきたのに、この存在について、人と話したことが全くと言っていいほどないからだ。

子供の頃に食べた懐かしいお菓子について話すことはもちろんある。そんな罪のないことを話すのは、大抵職場の飲み会だ。それはポッキーのことであり、ジャイアントカプリコいちご味のことであり、ねるねるねるね、のことだったりする。例えば後輩のアヤちゃんが、小学校のときにフランが売り出されて、こんなおいしいポッキー初めて食べたと思いました、と言えば、課長はまぶしげな顔をして、僕は大学生のときにメンズポッキーを彼女にもらってねぇ、なんて甘っちょろい話を始めて、一同がそれなりに色めき立つ。

まあ、フランはポッキーではないのだけど、そんな厳密なこと、誰も職場の飲み会で言うはずがない。

 

そんなときも、わたしは回り菓子の話はしない。それは余りにひっそりとした存在なので、職場の飲み会で話すトピックとしてはやや個人的過ぎるような気がするし、わたしは職場でたくさん話すほうでもないので、もしみんなが回り菓子について知らなかった場合、ディティールについて一から説明するのが億劫だ。第一、職場の飲み会において、下っ端の女子社員が1分以上座を独占して話を続けたら、これはかなりの事態である。そういう会社にわたしはいるのだ。

いや、私の会社の飲み会での立ち回り方などどうでもいい。

 

回り菓子は、ロケーション的には、先ほども説明したように、百貨店の菓子売り場の隅っこにいる。グラマシーニューヨークとかアンテノールとか、もっとぐっと庶民的にモロゾフとか、そういうメーカーみたいにテナントのコーナーになっているわけではない。ショーケースもない。和菓子なのか洋菓子なのかもわからないような場所、もしくは和菓子色も薄れてお茶売り場と佃煮売り場にグラデーションのようにつながっていく通路の隅とか、下手するとカレーやうどんなど、7階の食堂街よりもっとくだけた感じの食券方式によるイートインコーナーの裏手などに存在している。

 

形状は、白い巨大な、直径1メートルほどのドーナツが宙に浮かんでいると想像していただきたい。そして、ぜひ、ドーナツの穴にはぐるぐる回る一本のポールをぶっ刺していただきたい。それらがぜんぶ安っぽいプラスチックでできていて、その巨大なプラスチックドーナツには仕切りがたくさん設けてあり、中にはもちろんいろんなお菓子が入っている。たいがいは小袋に入っている薄焼きビスケット(動物の焼印つき)やあられ、一切れずつ包装してあるパウンドケーキやフィナンシェ、華やかなのは色とりどりのアルミにくるまれた飴やチョコなんかだ。一つ付け加えておくと、アルミは色とりどりでも、その味はどれも同じなので要注意だ!

 

客はそのあたりにきっと置いてあるボールもしくはバスケット(この辺は百貨店によって異なる)に欲しいお菓子を入れていき、レジで重さを測ってもらってお会計となる。従量制なのだ。

 

回り菓子というくらいだから、客はじっとしていて、回転寿司さながらドーナツ型什器がいろんなお菓子を見せてくれるのを悠然と待っていればいいのだけど、大抵の客はドーナツの遅い歩みにたまりかねて、熱心に思案と選択を重ねつつ、自らぐるぐると歩いてしまう。ドーナツの進行方向と反対に歩く人が多い。これはみんな早く次のお菓子が見たいからに違いない。思い余って後ろ歩きになっている。どうでもいい、というふうにポンポンお菓子をカゴに入れていく人はほとんど見たことがないので、パリス・ヒルトン的な思想の持ち主はこのコーナーには近寄らず、したがって真面目で勤勉そうな女性の一人客が概ねである。

什器も回り、真面目そうな客も(しかも後ろ向きに)回り、レジの人はなぜだかどこの百貨店も落ち着いた中年女性ばかりなのだけど(花形の宝飾サロンなどから飛ばされてきたのだろうか、と少し心配になる)、初めて来たデパートで、心の準備なくその光景に出くわすと、余りの無防備な様子にひやっとする。

 

不思議なことだけど、回り菓子は別に安くないのだ。それに、ビスケットにしたってアラレにしたって、普通にスーパーで売っているグリコや亀田製菓のものとさほど品質に違いは感じられないし、スーパーで売っているものは大袋で多少の値引きも加わっているため、回り菓子で同じグラム数を買ったらとても損することになると思う。

重さを稼ぐパウンドケーキなんかをとってしまうと、なんだかんだで600円分くらいすぐに買ってしまうので、それなら所詮は駄菓子に過ぎない回り菓子を買うよりも、よっぽどモロゾフでプリンを二つでも買ったほうがおうちで待っている人も喜びそうな気もする。

でも、回り菓子のファンはそんなことは気にしないのだ。そんなブランドや目先の利益に屈さずにみずからぐるぐる歩いてアラレやビスケットを選びたいのだ。そう考えると、あのドーナツの回りを何周も何周も後ろ歩きする生真面目そうな女性たちに、やんごとなき雰囲気すら感じる。

 

さて、回り菓子のお菓子を一手に作っているのは、株式会社スイートプラザ、という企業だ。

わたしは一度だけインターネットで検索してみたことがある。なんでそんなことをする気になったのかというと、10年前、毎日毎日就職活動で落とされまくっていたあの頃、子どものときから使っていた石鹸の会社も、子どものときから通っていたピアノ教室も、毎日乗っているバス会社も、郵便局も銀行も家具屋も片っ端から落とされて、リクルートのサイト経由ではなく、自分で会社を調べてみよう、と思ったときに最初に浮かんだのがスイートプラザだったのだ。就職活動に疲れ果てていて、あの桃源郷のように世間離れした空間の一角を担っている会社だったらなんだか楽しそう、と思ったのかもしれない。そんなわけはないのだが。

深夜、22歳のわたしは部屋でひとり、期待してクリックしてみた。そんな会社、全くヒットしなかった。